色々な水素供与手段
水素ガスを含む混合ガスを吸入することで、分子状水素を摂取することができます。吸入は効率的に分子状水素を摂取することができる手段ですが、とくに爆発の危険性に気を配る必要があります。
高圧ガス保安法の規制を受ける水素ガスボンベについては言うまでもなく、電解を原理とする、常温で圧力が1 MPa以上にならない水素発生装置であっても、局所的には水素ガスが爆発限界を超える濃度に達する可能性があります。
陰極における水素発生の時点から患者さんが吸入するまでの全プロセスで、水素ガス濃度を爆発限界である4 %未満に抑える工夫が求められます。
分子状水素を生理食塩液や液状薬剤に溶かして、得られた水素溶液を血中に投与する手段です。血中に直接投与しますので、実施する医師には、飲用の水素水を製造する企業と同等以上の安全性への配慮が求められます。
たとえば、水素ガスボンベを用いて、分子状水素を生理食塩液などにバブリングすることは可能ですが、院内に、水素ガスボンベを持ち込む危険性を考慮する必要があります。
同様に、水素ガス発生装置を用いたバブリングも、臨床での使用には向いているとは言えません。高圧ガスでないとはいえ、原理的には、気相に高濃度の水素ガスを発生させることには変わりはありません。
また、水素発生剤(金属粉末または水素化金属粉末)を生理食塩液に溶かしたものを使用する医師もいるようです。こうした水素発生剤は、医薬品として承認されているわけではなく、医療用として厳格な衛生管理のもと製造されているものでもありませんので、使用は避けるべきでしょう。金属粉末の溶け残りが血中へ移行してしまう可能性も危惧されます。
ではどうすれば安全な水素点滴が実施できるのでしょうか?→会員募集へ
分子状水素が、無色透明・無味無臭であるのを好いことに、まったく分子状水素が溶存していない水を水素水として販売する企業や、流通過程で分子状水素が抜けていくことを知りながら、ペットボトルに充填した水素水を販売する企業、食品衛生法や健康増進法に違反した原料を用いた水素水製造器具を販売する企業が後を絶ちません。
また、マイナス水素イオンや活性水素といった、分子状水素を連想させるキャッチフレーズとともにサプリメントや飲料水を販売している企業もあるようです。
当会では特定の製品を薦めることはしておりませんが、会員になられた医師の方には、ご要望に応じて、医家向けサプリメントとして適切な製品を紹介させていただくことは可能です。
市販の臓器保存液に水素分子を添加することで移植臓器の生存能力が改善することが示唆されています。水素ガスボンベを用いて、臓器保存液に水素分子を溶存させることもできますが、そこには、爆発のリスクや、水素ガス混合時の菌汚染のリスク、気泡化を誘発する過溶存のリスクなどが伴います。
したがって当会では、移植用臓器への分子状水素の作用を研究されている研究者の方に、臓器保存液用の水素溶存装置を紹介しています。市販品ではなく、研究目的でのお貸出しとなりますが、大阪大学、北里大学、国立成育医療研究センター、ピッツバーグ大学などで使用された実績もあります。
この装置を用いれば、水槽内の飽和水素水に、市販の臓器保存液をバッグごと漬け置きしておくだけで、飽和水素水中の溶存水素が臓器保存液に移行しますので、院内で水素ガスを製造したり貯蔵したりする必要がなく、また、水素ガス混合時のノズル接合部を介した菌汚染のリスクがありません。
また、必要本数の臓器保存液を、バッグごとまとめて漬け置きしておくだけですので、病院で調剤にたずさわる薬剤師や看護師に手間をかけません。
漬け置き開始から10時間後に、1.0 mg/Lの水素分子を含有した臓器保存液が得られます。